「こどもかいぎ」
7つの誤解


「こどもかいぎ」はまだまだ知られていない新しい試みです。なので、つい印象でいろいろな誤解をされてしまうこともあります。

このページでは、よく言われる「こどもかいぎ」に対する誤解についてお話ししたいと思います。

1. 子どもに「かいぎ」なんて無理でしょ?
2. 自己主張が強い、口ばかりが達者な子に育ってしまうのでは?
3. 結局、積極的な子だけが楽しめるのでは?
4. 苦手な子にとってはネガティブな体験になってしまうのでは?
5. 『かいぎ』なんてしたって、何も解決しないのでは?
6. 『かいぎ』=対話なんかでは暴力は止められないのでは?
7. 話す内容は哲学的な問いにしなきゃいけないの?

1. 子どもに「かいぎ」なんて無理でしょ?

「集中力がもたなそうだし、話し合うなんて、子どもにはとても無理なんじゃないか。大人ですら難しいんだから」と疑問を持たれる方もいると思います。確かにそういう側面はあります。子どもはじっとしていることが苦手だし、実際、撮影していて、『かいぎ』が合わないお子さんがいたことも確かです。でも、だからと言って、すべてのお子さんから自由に話し合う機会を奪ってしまうのは、モッタイナイ!とは思いませんか? 

話すって楽しい!というお子さんの方が圧倒的に多かったし、映画の中では、ずっと発言出来なかった子が話せるようになった例も出てきます。

ファシリテーターになる大人の場作りによっても大きく変わりますが、子どもたちが『かいぎ』をすることは間違いなく可能!この映画は、そのことを証明しています。

『こどもかいぎ』では、正解も、答えも、なくていいんです。たとえカオスになっちゃったとしても、自由に、思ったことを発言できる居場所を作ることが大切だと私たちは考えています。それを続けることで、理解する力、考える力、聞く力、話す力など、子どもたちの無限の力が伸びていくのです。

2. 自己主張が強い、口ばかりが達者な子に育ってしまうのでは?

『かいぎ』はディベートではありません。他方を言い負かし、物事を有利に進めるための技術を磨く場ではなく、お互いの話を聞き、理解しようと努め、新しい価値観を生み出そうとする機会です。
つまり、口ばかりが達者で自己主張が強い人間とは「真逆」の、相手の立場を尊重し、共感力が育まれた、コミュニケーションが上手な人間に育つことが期待されるのです。



3. 結局、積極的な子だけが楽しめるのでは?

『こどもかいぎ』では、ファシリテーターの誘導によって、出来るだけ多くの子どもたちからの発言を引き出します。決して、話が得意な子や積極的な子だけでなく、参加したほとんどのお子さんが自分の意見を言ったり、お友達の意見を聞くことを楽しみます。

最初は消極的に見えたり、話すことが苦手な子でも、回を重ねることで、積極的に手をあげたり、うまくポイントをまとめられるようになったりすることは何度も見受けられる「『こどもかいぎ』あるある」です。

対話の経験が薄かったり、自分の発言を聞いてもらう経験が少ないと、大人になってから、うまく自分の気持ちを伝えられなかったり、誤解されてしまうような表現で伝えてしまったり、会議でしっかりと発言ができずに「会社で適切に評価されない」などの不利益を被る可能性も考えられます。

現在、コミュニケーション上、有利なのは、元来コミュニケーションが得意な人、そして「声の大きい人」だとは思いませんか? そのような「不均衡を是正」するためにも、小さい頃からの発言・対話の経験と積み重ねが必要なのではないかと感じています。

4. 苦手な子にとってはネガティブな体験になってしまうのでは?

『かいぎ』に出たくない子は無理に出る必要はありませんし、『かいぎ』に出たからといって、意見を言わなければならないというルールもありません。

『こどもかいぎ』は発言するだけでなく、「聞く場所」でもあります。うまく発言できない場合でも、ファシリテーターが発言しやすいような場作りをしてくれるはずです(^^)。

一方で、『こどもかいぎ』は、コミュニケーションが苦手な子が、自信を持つチャンスにもなりえます。映画の中でも、発言できなかった子が何回かの『かいぎ』への参加で、意見を言えるようになった例があります。

国語や算数などは、たとえ得意・不得意があっても、将来的に他の分野でカバーできますが、コミュニケーションは社会で生きていく上で、欠かせないもの。人間の悩みのほとんどは人間関係とコミュニケーションの不和から生じます。

また、海外に出たら「発言しない=考えていない・意見がない」と捉えられてしまう事も多く(実体験アリ)、対話慣れしていない多くの日本人が不利な立場に立たされる現状もあります。

このように、コミュニケーションが苦手なまま育ってしまうと、将来的に不利益を被る可能性もあります。映画に登場していた女の子のように、最初は発言しなくても参加しているだけでもいいんです。少しずつ場に慣れていけば、気持ちを伝えるようになっていく可能性もありますし、そこから場数を踏んでいくことによって、コミュニケーションが得意とは言わなくても「苦手意識を減らせる可能性」は出てくるのではないかと信じています。

5. 『かいぎ』なんてしたって、何も解決しないのでは?

『かいぎ』は対話の場であっては、答えを出すことや解決する事が目的じゃありません。もちろん、そこでお互いに納得する形で、方向性が決まればベターかもしれませんが、物事ってそう単純じゃないことも多いですよね。人それぞれ様々な背景や立場があり、多様な生き方をしていますから。

しかし、ダイバーシティな世の中で、対話をすることで、「自分と異なる考えがある」ことを知り、お互いに歩み寄り、信頼関係をつくり、将来的な解決に至る道筋をつくこともあるのではないかと思います。時に、平行線のままでいることも必要な時があるのではないでしょうか?



6. 『かいぎ』=対話なんかでは暴力は止められないのでは?

確かにそういう側面もあると思います。アフガニスタン情勢などを見ても、圧倒的な暴力の前には、対話は時に無力です。それは事実。しかし、もし、小さな頃から『かいぎ』をする場があり、対話によってお互いの意見を聞き、認め合う習慣があれば、問題解決に暴力と言う手段を選択すること自体が少なくなるのではないでしょうか?

「言葉で言えば良いのに、何で鉄砲とか使うの?」これは、『こどもかいぎ』で戦争の話になった時に、参加していた女の子が発言した言葉です。

対話は万能ではありませんが、人間力を養い、社会環境を改善する大きな武器にもなりえます。たとえ、それが分かるのは数十年後だったとしても、子どもたちの可能性を信じてみませんか?

7. 話す内容は哲学的な問いにしなきゃいけないの?

『こどもかいぎ』では、生まれることや死について、など哲学的な内容について語り合うこともありますが、映画の中にもあるように、夏休みに楽しみにしていること、保育園で苦手なこと、お楽しみ会でどんな劇をやりたいかなど、日常生活にも関わる内容について話し合うことも多々あります。

一つの「問い」をめぐって 考えたこと・感じたことを述べあい、聞きあうことで、考えを深め、お互いを理解できるようになることも大切ですし、一方で、子どもたちの生活に身近なテーマについて話し合うことで、子どもたちにとっては、より話しやすい場所にもなり、その経験が日常的な対話の習慣につながっていくのではないかとも思います。



その他、『こどもかいぎ』について&プロダクションノートはこちら


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