『こどもかいぎ』は子どもたちの居場所になり、自己肯定感を上げる
『こどもかいぎ』の撮影を始めてしばらくの間、『かいぎ』で全く発言しないサヤカちゃんという女の子がいました。
周りのお友達の発言を見ているだけで、自分から口を開こうとはしません。
しゃべりたいことがないのか、それとも、緊張して話せないのか……。
先生に聞いてみると、サヤカちゃんはお友達関係で問題を抱えている訳ではないものの、自分から話をするタイプの子ではないとのこと。
ある先生は「仲良くなるには時間が必要」と言っていましたが、僕も半年くらい、彼女の声を耳にすることはありませんでした。
『かいぎ』に参加することが辛いのかな?とも思い、先生に相談。
先生が直接、サヤカちゃんに聞いてみると、「『かいぎ』には出たい」と言う。
実際、誘えば「出る」と言うし、嫌そうにはしていませんでした。
すると、変化は突然、訪れます。
『かいぎ』に参加するようになって、4回目か5回目くらいだったか。
「どうしてお友達とケンカをしてしまうんだろう?」というテーマで話をしていた時、「おうちでもケンカしたりするのかな?」先生からの質問に、サヤカちゃんがフッと返答したのです。
「するよ……」と。
そこからのサヤカちゃんは、人が変わったように積極的に手を上げて発言するようになり、卒園の頃には自分の夢をカメラの前で高らかに語ってくれました(映画の中にも出てきます)。
『こどもかいぎ』のファシリテーターを担当していた先生は「回を経るごとに安心感が彼女の中に積み重なっていったから、これだけ話をしてくれるようになったのかな」と後に語られていましたが、カメラ越しに見ている僕も、このサヤカちゃんの姿にはとても感動しました(!!)
この時に、僕は気づいてしまったんです。
『こどもかいぎ』の「新たな可能性」に……。
それは、『こどもかいぎ』は、単におしゃべりするだけの場ではなく、「子どもたちが安心できる居場所」にもなり、子どもたちの自己肯定感を上げ得る、ということ。
大人だって、自分の発言を受け止めてもらえる絶対的な空間があれば、居場所として認識しやすいし、子どもにとっては、褒めてもらえ、認めてもらえる経験の積み重ねによって、自己肯定感が上がっていくだろう事は、想像できますよね。
ある研究結果では「家の人に話を聞いてもらっている、と思う子どもほど、自己肯定感が高い」ことが分かっています。これは、家庭に限らず、「家庭のように安心できる環境の中」で「話を聞いてもらっている」と思えれば、「自己肯定感は高まっていく」可能性が高いと言うことなのではないでしょうか。
別の機会に、小学生と『こどもかいぎ』をやった時、子どもたちからは
「自分の話を聞いてもらえて自信が持てた」
「大人が子どもたちに真剣に場所を作ってくれようとしていることが分かって、嬉しかった」
「大人が自分たちの話をちゃんと聞いてくれることが、こんなに"快感"なんだと思わなかった」
という感想を語っていました(詳しくはこちらのアンケートもご覧ください)。
長年の愛着障がいの取材から痛感していますが、残念ながら、家庭内で自己肯定感を育めないお子さんは、一定数いらっしゃいます。
しかし、セーフティーネットとはいかないまでも、保育園や幼稚園、学校など、子どもが必ず通う施設で『こどもかいぎ』のようなことが行われたら、先進諸国に比べて特に低いと言われる日本の子どもたちの自己肯定感も上がっていくかも……とは思いませんか?
日本では子どもに関するデータが非常に少なく、これらのことを裏付けるようなエビデンスはまだ見つけられていませんが、
今後、このようなことにも研究費がたくさん出されるようになり、数年後には、しっかりとしたエビデンスとして裏づけてもらえたら、と願っています。
※ もし、国内外で、「話を聞いてもらうことが自己肯定感を高める」と言う研究結果をご存知の方がいらっしゃったら、ぜひこちらまでご連絡ください。
https://www.umareru.jp/contactus/
いま、子どもたちの周りには、不登校やいじめ、ひきこもり、ヤングケアラー、精神疾患、自殺などの様々な問題が取り巻いています。
しかし、『こどもかいぎ』によって「居場所」を与えることが出来れば、どうでしょう?
これらの問題は、大幅に改善されると思いませんか?
『こどもかいぎ』の大いなる可能性を、改めて感じた出来事でした
(「「こどもかいぎ」の7つの誤解 4. 苦手な子にとってはネガティブな体験になってしまうのでは?」も参考にしてください。)