産後うつになるとどういう影響が出るの?
産後うつになってしまうと、以下のように、ママ本人だけでなく、パートナー、家族、そして何より、お子さんの成長に大きな影響を与える可能性があります。そのため、ママを孤独に陥らせない環境作りなどの対策が分娩直後から求められます。
※川崎殺傷事件などの凶悪犯罪は「子育ての結果」と指摘されています。
どうして産後うつになるの?
産後うつになってしまうのは、様々な要因が複雑に絡み合うことによりますが、原因を一言で説明すると、「子どもが生まれる」という大きな環境の変化に、心も身体も対応できない状態が続いた場合、と捉えることが出来ます。
産後うつになる原因をブレイクダウンして考えると、「さ・し・す・せ・そ」のキーワードによって説明できるのかなと思います。
これはあくまで僕独自のアイデアですので、参考程度になさってください。
◎産後うつになってしまう「さ・し・す・せ・そ」
■【ママだって満たされなければ愛は注げない】映画『ママをやめてもいいですか!?』ちょい見せ動画
産後うつにならないようにママができること
産後うつへの対策は、一言で言えば、サポートを増やし、ストレスを減らすこと、です。
その方法論として、以下の10点が考えられます。
先に書きましたが、オリンピック選手だって、初めてその競技に触れた時は、あまり上手くは出来なかったはず。
最初から完璧な100点ママを目指そうとすると、自分の首を絞めてしまう可能性だってあります。
自分が出来ていない部分に注目しすぎてストレスを溜め込むよりも、出来ている部分を褒める方が、きっと精神的には晴れやかです。
よく言いますが、
60点でいいーーんです!! 授乳し、ミルクをあげ、オムツを交換し、着替えさせ、抱っこして、寝かしつけ、
子どものいのちを生かしているあなたは、毎日十分頑張っています。そのことをまずは自分で認めてあげて、完璧に出来ない自分にOKを出してくださいね。
毎日がんばっているすべてのママに、励ましの詩をご紹介します。
この詩はもともと、ニュージーランドに伝わる、子育てに奮闘するお母さんを励ます詩でした。実は映画『ママをやめてもいいですか!?』の中に、ママがやっていることを一つ一つ評価するシーンがありますが、それは、インタビュー撮影させていただいた山本詩子先生の助産院に貼られていたこの詩からインスピレーションを受けて作ったものです
たとえ、パートナーや親のサポートがあったとしても、子育て特有の「共通言語」が通じない時もあり、「分かってくれない」という孤独を感じやすくなります。
そんな時、
同じ立場で「共通言語」の通じるママ友は、子育ての大きな大きな味方になってくれます。
話してみると、実は同じようなことで悩んでいたり、不安に思っていたりして、「自分はひとりじゃないんだな」とホッと安心できたりするものです。また、クリニックや予防接種など様々な
情報交換をすることで、いざという時に子どもを守ることにもつながります。
言わば、「ママ友探しは宝探し」だと思って、病院での集まりや地域の子育てルーム、公園など、積極的に外に出て、情報を集めてみてください。
少し時間はかかるかもしれませんし、場所によっては地域によっては近所での友達づくりが難しい場合もありますが、
自宅以外に自分の「居場所」があることは、ママの気分転換になるだけでなく、他の人の子育てを参考にすることができたり、近い将来、お互いに子どもを預かってもらったり、何か頼みごとをお願いできるなど、良い点がたくさんありますよ。
ちなみに我が家には、近所、保育園、小学校という環境の中で、たくさんのファミ友がいますが、それぞれ、
気軽に頼みごとを言えるようになるまで、3年くらいはかかりました。でも、いまでは、例えば夜や休日の撮影があっても、娘の面倒を頼める人は何人もいますし、それ以上に僕らがお子さんたちをお預かりして楽しい時間をすごす機会も多々あります。
日々、積極的に顔を出したり、話す機会を作ったりすることって、すごーーーく大切だなぁと実感しています。
ただ、「友達を作るのが苦手」というママもいますよね。もちろん、あまりにストレスになるようであれば、無理して作ろうとしなくても大丈夫です。他のママと会った時に、笑顔で挨拶するようにしていれば、そのうち自然とママ友らしき人ができていくのかなと思います。
ただし、これらすべてをやりましょうということではなく、このうち出来そうないくつかに取り組んでもらえれば、予防になりますよ、という意味合いで捉えてください。これを全部できる人なんていませんので! (笑)。
以上、サポートを増やし、ストレスを減らす方法を10点ほど書きましたが、このうち、半分くらいでも実現できると、産後うつへの対策になるかなぁと思います。
大切な人を産後うつにしないために周りでできること(パートナー編)
ママを産後うつにしないために、パートナーができることは、以下のようなことなどが考えられます。
どんなに愛する子どもでも、休みがなければしんどくなります。どんな好きな仕事だろうと、休みがなければやめたくなるのと同じこと。
子育てや家事を代わって、たまに「ママやめ」できるようにしてあげてください。
◎パパが出来る物理的なサポート
・ミルクをあげる(昼)
・ミルクをあげる(夜)→ただし仕事に差し支えがないようにご注意を
・オムツ交換
・沐浴
・赤ちゃんの相手
・買物
・料理
・(既に1人目がいれば)上の子どもの相手、幼稚園・保育園などへの送迎
・家事(掃除、洗濯、食器洗い・棚戻し、ゴミ集め・ゴミ捨て、郵便物のチェック、ベッド・メイキングなど)
また、家事には、いわゆる「見えない家事」というものも多々あります。「今夜くらべてみました」というテレビ番組内で扱われた「
見えない家事リスト・全162項目」が参考になりますので、良かったらご覧ください。
家事はやろうと思うと、これだけの事があるんですね〜!
もし、
忙しすぎたりする場合は、家事代行サービスや託児サービスなどを調べて提案してあげるのも良いと思います。
■【ママの地雷を踏まないで!これだけはやっちゃダメ!】映画『ママをやめてもいいですか!?』ちょい見せ動画
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〜パパも産後うつになるってホント!?〜
ママと同じくらいの割合で、パパも産後うつになることが、最近の研究でわかってきました。
カナダでは約8.4%の男性がいわゆる産後うつの状態になったという研究結果がありますが、
日本国内の研究でも約1割のパパが産後うつのリスクありと判定されています。
パパも、赤ちゃんが来たことを喜びながらも、その環境の変化に戸惑います。そして、パパになったからには、大黒柱として一層仕事も、さらに子育ても頑張ろうと思うもの。
でも、どうしても
子どもと接する時間が短いパパに、子どもは懐きにくかったり、家事や子どものお世話に慣れていないと、ママから「違う」「頼りにならない」などと言われたりと、居場所をなくしてしまい、ジレンマに陥ることがあるのです。
ママもパパもお互いを理解し、労わりながら、子育てを一緒に楽しみたいですね。
■【衝撃事実!パパも産後うつになる!】映画『ママをやめてもいいですか!?』ちょい見せ動画
大切な人を産後うつにしないために周りでできること(家族や友人など周りの人編)
ママを産後うつにしないために、周りの人たちにできることは、以下のようなことなどが考えられます。
産後うつは10人に1人がなってしまう可能性があり、誰でもなりうるものです。周りで支えられる立場の方々が『産後うつ』という病気があると知った上で、サポートをすることが、まずは大切です。
特に
上記の「さ・し・す・せ・そ」に当てはまる項目が多い方には、もしかしたら予想以上のサポートが必要かもしれないことは頭に入れておいてください。項目が多い方は、産後2週間から1ヶ月は特にサポートが必要です。
端的に言いますと、以下はいわゆる「NGワード」と認識されます。
こういった言葉をママにかけないようにご注意ください。
「良かれ」と思っての声がけかとは思いますが、子育てのパワーになるどころか、気力を著しく削いでしまう可能性も出てきます。
めちゃくちゃ覚えにくいと思いますが(笑)、上の頭文字をまとめて「はがみじかい(歯が短い)」と覚えてみてください。「か」がちょっと無理があるかな〜……。
「母親はこうあるべき」「子育てはこうしなきゃ」という「あるべき族」の人は産後うつになりやすい傾向があると(あくまで「傾向」です)、書きましたが、これはもともとのご本人の性格だけでなく、
周りの「母親なんだから……」という言葉や態度などによって「あるべき族」にさせられてしまう場合もあります。
特に親御さんの時代と現代では、子育ての環境はまるで違いますし、
子育てに良いとされている情報が異なることも多々ありますので(例えば、40年くらい前は「抱き癖がつく」と抱っこを否定する情報がまかり通っていたりしました)、
ママを尊重して、
ご自分たちの経験・知識を無理強いしすぎず、適切なコミュニケーションでママを支えてあげてください。
ママを産後うつにしないために赤の他人のあなたができること
赤ちゃん連れのママを見ると、特に「ちょっと困ってそうだな」という時、何かしてあげたいけど、どうしたらいいの?という方も多いと思います。
そんな「赤の他人」のあなたへ。
こんな感じで「赤の他人」のママをサポートしてみてはいかがでしょうか?
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産後うつにつながりやすい現代の社会環境
〜親世代と現役世代の子育てはこんなに違う!〜
現在は、制度の面などから見ると、もしかしたら20-30年前よりも子育てへの公的サポートが増えているかもしれません。しかし、それでも
産後うつ・子育てうつが増えているのには、現代特有の社会環境が影響しています。
これは科学的な見地にはなっていませんが、僕は以下の5つの点が、特に現在の産後うつや子育てに関係しているんじゃないかなと感じています。
子育てに積極的なパパ=イクメンが注目されるようになりましたが、
メディアの報道とそれによって期待値のあがってしまったママの求めに、パパの現実が追いつかず、「イクメン・バブル」状態になってしまっていることも、ママのストレスを増大する要因の一つになっていると思います。
僕は「イクメン」という言葉が「育児をするパパ」という意味なのであれば、パパが「イクメン化」するのは当然のことだと思っていますが(パパなんだから育児するのは当然でしょ???)、
労働環境によってはそれが許されず、職場と家庭の間で板挟みになっているパパも残念ながらたくさんいます(精神面で追いついていない場合も当然あります)。
また、イクメンになることを求められても、それに対する
教育的な行為が学校でも職場でも、奥さんが健診に行っている産婦人科でもなされるわけではないし(なされていても、「20年間、子育てをする」上では十分ではない)、もしくは、上の世代から伝承されることでもないので、「何をして良いか分からない」状態が抜本的に変わらないままパパにならざるをえないことも影響していると思われます。
ただ、ママの立場からすると、「パパになったんだからしっかりしてほしい」と求めるのも当然のことではあるし、
僕もパパとして「人生OS」を入れ替えて、きちんと勉強して備えるべきだとも思います。
また、妊娠が分かってから突然、数日内に出産があるわけではなく、概ね、「トツキトオカ」の準備期間があるわけですから、その間に、パパになる準備をしてもらいたいという気持ちも理解できます。
しかし現実として、
家庭と仕事のバランスが上手く取れずに産後うつになってしまうパパが、実はママと変わらない割合でいるので、非常に難しい問題……。
やはり、育休制度や勤務時間の短縮化など、労働環境の変革と社会的な理解が急務だなぁと感じています。
平均初産年齢は、僕が生まれた1973年では24歳でした(内閣府の資料による)が、2011年に30歳を超え、「晩産化」が定着しています。
女性が社会で活躍する機会と選択肢が増えたことは素晴らしいし、僕は心から応援していますが、周産期医療の関係者によると、「晩産化」は出産・育児を難しくしてしまう要因も多々あるそうなのです。
年齢を重ねれば重ねるほど、当然、体力は低下する傾向がありますから、身体に負担のかかる妊娠・出産において、20代前半〜半ばで出産するよりも、難しい側面が増えてしまうのが現実です(もちろん人によって大きく異なります)。それによって難産になってしまうリスクも増えますし、産後の「子育てをする全般的な体力」が減ってしまい、「体が追いつかない」という声も多々聞きます。
また、40歳前後で出産する人が増えたということは、それだけ、社会で働いてきた年数も長いということ(人によって異なりますが)。
これが子育てにおいてどんな影響を及ぼすのかというと、
ポジティブな面では、人生における様々な経験をしている点。年齢を重ねることで、人は精神的に落ち着いていく傾向がありますから、穏やかに子育てが出来る可能性が増える点。
一方、ネガティブな面としては、「あるべき族になりやすい」という点です。
社会生活が長く、自分のペースで人生を歩めば歩む年数が長くなればなるほど、生活の様々な面において「ここはこうすれば大丈夫だな」とか「これでうまくいく」など、やりくりする「コツ」を掴む知識・経験も増えますが、それは逆に
「自分のやり方」が確立されてしまっているので、「ここはこうでないと、なんか気持ち悪い」とか「ここはこうあるべき」という「あるべき族」の傾向が強くなります。
「
産後うつになりやすい性格」のところで、「あるべき族」という点を指摘しましたが、
生まれたばかりの赤ちゃんは「あるべき」思考では対処しきれません。にも関わらず、長年の習慣から、自分のやり方・考え方・捉え方を変えにくくなっていて、それによって自分を苦しめてしまう部分があるのかもしれません。
以上、書いた5点は良い悪いの話ではなく社会環境の変化によって、子育てを困難にさせる現実的な事柄としてまとめてさせていただきました。