実践
■『こどもかいぎ』の事前の準備
事前の準備はほとんどありません。決めておくのは、
2. 場所
3. 参加者(年齢、人数)
4. 話し合うテーマ
5. ファシリテーター
といった感じになります。
ってことで、さっそく『かいぎ』をスタートしてみましょう! 運営方法を解説します!
■初めての『こどもかいぎ』への3つの工夫
当然ですが、最初の頃は、まだお子さんたちが『かいぎ』に慣れていないので、やり方が分からずにうまく発言できない子や、参加したがらない子もいます。
そこで、説明してすぐ始めるよりも、例えば、
1. 子どもたちが丸くなって座って話しているような絵や映像などを見せてあげる。
※『こどもかいぎ』の説明の仕方例
2. 大人同士でやってみせてあげる。
3. 答えやすい「一問一答個別アンケート」や「クローズドクエスチョン」から始めてみる。
などの工夫をすると、より感覚的に『かいぎ』というものが分かりやすくなるかもしれません(活発な『こどもかいぎ』を目指して: 10つの工夫もご参照ください)。
ただ、しっかりと理解しているようであれば、手本を見せなくても良いですし、多くの場合、周りが楽しそうにやっていたり、お友達が発言している様子を見て、自ら発言できるようになる可能性も高いと思いますが、その時間軸はお子さんによって様々ですよね。
まずはあまり多くを期待せず、短時間で全員が参加できて、「楽しかった」と感想を持ってもらうところから始めてみましょう。
■子どもたちに伝える「お約束」
話し合うにはルールも必要です。自由の中にある規律とも言えるかもしれません。『こどもかいぎ』を始めるにあたって、何をしていいのか、何をやってはいけないのか、などを分かりやすくするため、子どもたちには以下の「おやくそく」を伝えることをおすすめします。
2. 話したいことがある時は手を挙げてから話そうね
3. 誰かがお話をしているときは、最後まで聴こうね。
4. 『かいぎ』中は椅子から離れないようにしようね。
5. 誰かが嫌がるようなチクチク言葉は言わないようにしようね。
6. もう少し考えたいとか、どう話していいか分からない場合は「パス」と言ってもいいからね。
7. ここでお話することが苦手だったり、うまく言えなかったりした時は、『かいぎ』が終わった後でもいつでもお話を聴くから言ってね。
などなど。
あまり多いと忘れてしまうので、このうち3つくらいの説明に留めても良いですし、堅苦しさを感じさせないよう、特にルールを説明しないで始めるやり方もアリです。
大きめの紙にイラストを描いて説明すると分かりやすいかもしれません(「おやくそく」の文字イラストはダウンロードできるようにいたしましたので、こちらからご利用ください)。
また、これらをクイズ形式にしたり、子どもたちに意見を聴きながら進めると、記憶が想起されて、運営しやすくなるとも思います。
細かいかもしれませんが、プライバシーを考慮し、『こどもかいぎ』で聴いたことは、おうちの人以外、他の人に話すことはしないように、と伝えておくのも一つの考え方です。ただ、守られる確率は決して高くないのと(笑)、そこまで子どもに負担を強いるべきかという考え方もあるでしょう。
(以下は小学生以上向け)
・話している人を非難したり、相手を打ちまかす事はしないようにしようね。
・無理に意見を言わなくても大丈夫だよ。言うことだけでなく、話されていることについて、自分の頭の中で考えてみるのも、とっても大事なんだよ。
■『こどもかいぎ』のオープニング: 10つのステップ
『こどもかいぎ』を始める際は(特にテーマ系の場合)、次のような順番で進めるとスムーズです。
※ 順番は厳密でなくても良く、入れ変わっても大丈夫です。
※ レポート系、イベント系は1〜9を省いてもOKだと思います。
2. ファシリテーターが挨拶をする
3. ファシリテーターが、参加者一人一人に声をかける
4. 『かいぎ』とは何かを説明する
5. 『かいぎ』することを宣言する
6. 参加者の名前を紹介する
7. 声がきちんと聴こえているかを確認する
8. ちょっとしたアイスブレイクがあると始めやすいかも
9. 注意事項やルールについて簡単に説明する
10. 実際に話し合う内容を投げかけて、『かいぎ』スタート!
1. まず、丸く並べた椅子に座る。
2. ファシリテーターが挨拶をする。
例: 「こんにちは!今日のかいぎの進行役をつとめる◯◯です。今日はみんなの話を聴けるのを楽しみにしてきたよ。よろしくお願いします!」
最初に「今日は時間を作ってくれてありがとう」など、お礼から始めると、皆さん、気持ち良く『かいぎ』が始められるかもしれません。
3. ファシリテーターが、参加者一人一人に声をかける。
例:「○◯くん、今日は参加してくれてありがとう」
「◯◯ちゃん、素敵なお洋服を着てるね〜」
「◯◯くん、お話しする準備はできてる〜?」
※もちろん、始まる前でもOKです。
4. (最初のうちは)『かいぎ』とは何かを説明する。
例:「みんなでこれから『こどもかいぎ』をやりたいんだけど、みんな、『かいぎ』って何するか知ってる?」→(子どもの意見を聞く)→「『こどもかいぎ』というのは、先生がこういうことお話ししようねーってみんなに言うから、みんなは自分が思ったことを自由にお話したり、みんなのお話を聴いたりする時間です。」
5. 『かいぎ』することを宣言する。
例:「それではこれから『こどもかいぎ』を始めたいと思います。皆さん、よろしくお願いします!」
※『こどもかいぎ』の始め方例
6. 参加者の名前を紹介する。
例:「今日の『かいぎ』に参加してくれたのは、◯◯くん、◯◯ちゃん…です。参加してくれてありがとう!」
※知らない子がいた場合はお互いに名前を紹介する。
例:「○◯くんと、◯◯くんは今日初めて会ったのかな?(参加してくれたかな?)お名前を覚えてあげてね、◯◯くん、◯◯くん、よろしくお願いします。」
※一つのアイデアとして、おもちゃのマイクでそれぞれ自己紹介してもらったりするのも、良いアイスブレイクになるかもしれません。
7. 声がきちんと聴こえているかを確認する。
例:「僕の声はみんなにちゃんと聴こえているかな?聴こえづらかったらいつでも教えてね。」
8. ちょっとしたアイス・ブレイクがあると始めやすいかも(※後述の「アイスブレイク」をご参考ください)。
9. 注意事項やルールについて簡単に説明する(※後述)。
例:「それでは今日の『かいぎ』の簡単なお約束を説明するね。」
既に何回か経験がある場合でも、子どもたちにお約束を思い出してもらうと良い場合もあるかもしれません。子どもたちに「どんなお約束があったかな〜?」と質問を投げかけて答えてもらう形にすると、良いウォーミングアップにもなります。
10. 実際に話し合う内容を投げかけて、『かいぎ』スタート!
・以上に書いた『かいぎ』の段取りを絵に描いておくと言うのも一つです。最初は椅子を並べるよ、ご挨拶しようね、というような流れを描いておいて、今ここだよ、と示しながら進めた方が分かりやすい子がいるかもしれません。
■ゼロから始める『こどもかいぎ』で起こりうる3つの(心配な)こと
1. カオス状態
ウロウロしたり、部屋から出て行ってしまったり、おもちゃなどで遊び始めたり、子ども同士でじゃれあったり、床に寝そべって『かいぎ』に参加しなかったり……、『かいぎ』をうまく運営できない状態です。
カオス状態になると、参加している子どもたちの集中力は落ちていきます。
映画の中でも初期の頃にありましたが、特に未就学児の場合、このような事が頻発する傾向があり、どうハンドリングするかはファシリテーターの腕にかかってきます。
座っていられずにウロウロしている子がいてもいいし、その場で参加出来る人だけで『かいぎ』をやれば良いのでは、と言う考えもありますし、子どもたちの意見を聴いてから中止するのも選択肢の一つです。
それはそれでファシリテーターが判断すれば良いのですが、しかし、これらの事は『かいぎ』中でなくてもできることです。せっかくみんなで集まり、準備をし、貴重な体験をしてもらおうと『かいぎ』を開催するのですから、できれば、皆さんに『かいぎ』を経験してもらった方が良いのでは?というのが『こどもかいぎ』事務局の考えです。
それも踏まえた対策としては以下のことが考えられます。ぜひ参考にしてください。
◎カオス状態になった時の対策案
・参加できていない子に「大切な話し合いだから参加してほしいな」「◎◎していたところ悪いけれど、出来れば参加してほしいな」と伝えた上で、「無理して参加しなくてもいいんだよ。どうする?」と聴いてみる。
「引き続き参加したい」ということであれば、「それなら、きちんと座って他のお友達のお話を聴こうね」と促し、「もうやめたい」ということであれば、部屋の中、もしくは部屋から出て、他のやりたいことをしてもらっても良いと思います。
・参加していない子に敢えて質問を振って、『かいぎ』に参加する機会を作る。
・休憩もしくはアイスブレイクをして、リフレッシュしてから『かいぎ』に戻る。
・「今日はもうやめようか?」と全員に『かいぎ』を継続するかどうかを聴いてみる。
「引き続きやりたい」ということであれば、「それなら、きちんと座って他のお友達のお話を聴こうね」と促し、「もうやめたい」という子どもがいれば、部屋から出て他のやりたいことをしてもらい、「もうやめたい」と皆が言えば、「じゃあ一つだけお話しして終わりにしよう」と伝えて席に戻ってもらい、少しだけでもお話をした後に『かいぎ』自体を終了する、というのも一つです(すぐに『かいぎ』を終了してしまうと、『かいぎ』に対する印象が良くないまま残ってしまうためですが、もちろん、その場でやめても良いと思います)。
・『かいぎ』自体を終了する。
この選択肢もあっていいと思いますが、終え方が難しいですね〜。諦めた感を出すよりは、「今日は集中できなそうだから、今度またやろうか」とか、前述のように、「じゃあ一つだけお話しして終わりにしよう」と伝えて席に戻ってもらい、少しだけでもお話をした後に『かいぎ』自体を終了する、という方が、悪い印象を少なくして次につなげることがしやすくなると思います。
※「秩序を整える」という選択肢
これは様々な考え方がありますが、お友達の話がどうしても聴き続けられないようであれば、「『かいぎ』を終わります」などと毅然な態度で接することも、一つの選択肢だと思います。
『かいぎ』は「『かいぎ』に参加するぞ」という気持ちで臨まないと、うまく参加できずに、もったいない時間を過ごしてしまうこともありえます。大声を張り上げるのではなく、場合によっては、ちょっぴり厳しめの口調で律することもあってもいいのでは、と思います。
現実的に、子どもの対話に関わる活動をされているところは、そのような選択肢を持っていることが多いようです。
2. 無風状態
子どもたちから全く発言が出てこない状態です。
ただ、『こどもかいぎ』では、一時期の無風状態は決して悪いことではありません。それは、子どもたちに落ち着いて考える時間を提供することにもなるからです。『こどもかいぎ』のポイントは必ずしも発言するだけでなく、考える、聴く、というところにもあります。
しかし、無風状態があまりにも続くようですと、『かいぎ』を開催する意味や効果が薄れてしまいますから、何か対策を練れると良いですよね。
これに関しては、まず、なぜ発言が出ないのかを分析する必要がありますが、その理由と対策は以下のことが考えられます。
◎無風状態になった時の考えられる原因と対策案
・やったことがないので何をしていいか分からない。
↓
話しやすいテーマを投げかけてみたり、クローズド・クエスチョンなど答えやすい質問を振ってみてはいかがでしょうか。
一緒に参加しているお友達の中で話し始める子がいると、「あー、ああやって話せばいいんだ!」と学んで、周りの子どもたちにも良い形で伝染していくのはよくあることですので、まずは話せそうな子数人に引っ張って行ってもらうことも選択肢の一つです。
また、「みんなに聴いてみたいと思っていたことがあるんだけど」「いつも疑問に思っていたんだけどさ‥‥」など、ファシリテーターが子どもたちに相談するようなスタンスで質問をしてみると、答えやすいこともあるようです(「活発な『こどもかいぎ』を目指して」の項目もご参考ください)。
・話している内容や質問の意味が分からずに付いていけない。
↓
みんなが付いてきているか率直に聴いてみましょう。よく分かっていないようであれば、話している内容を噛み砕いて説明してみたり、他のことで例えてみたり(子どもたちの身の回りにあり得るケースで置き換えると分かりやすいと思います)、理解していそうな他の子どもに説明してもらったりすると、良いかもしれません。
話が理解できると、子どもたちの脳ではいろいろな発想が浮かぶことが多くありますので、うまく発言に結びつけられるといいですね。
投げかけたテーマや質問が適切だったかの見直しが必要になる場合もありそうです。
※『こどもかいぎ』の運営: ファシリテーターの話の「聴き方」2つのポイント〜子どもの話を引き出す「最短距離」はこちら
・頭の中ではしっかりと考えているのだけれど、言葉にすることがうまく出来ない。
↓
まずはじっくりと、言葉が出てくるまで待つことが大切ですよね。「焦らなくても大丈夫だよ」と声をかけ、落ち着いて話せるまで、「みんなで待ってみよう」と伝えてみたり、「全員で考える時間にしてみようか」と声をかけたり、質問を変えてみたりしましょう。
ただ、あまり待ちすぎると他の子が待てない場合がありますので、なかなか出ないようであれば、「また後で聴くね」「うまく話せそうになったら言ってね」と声掛けして、先に道があることを示してあげると良いかもしれません。
いつまで待つかは、その子の表情や様子、他の子の様子から判断します。
もし、その後も発言が出てこなかった場合は、終わった後に声がけしてあげると、子どもにとっては失敗体験として残りにくくなると思います。
・ 恥ずかしがり屋さんで性格的に発言できない。
↓
これは映画の中でも出てきますが、こういうお子さんもぜひ尊重してあげてください。もしかしたら、『かいぎ』に出たくないかもしれないし(映画の子のように)、出たいけれどうまく発言できない、ということかもしれませんが、大切なのは、ファシリテーターが勝手に決めないことです。
ぜひ、そのお子さんに「どうしたいの?」と同じ目線で聴いてあげてください。
一度も発言できないことが続くようなら、「内緒で教えて」と耳打ちしてもらう提案をしたり、「他にAちゃんの話に賛成の人~?」と聴いてジェスチャーで表現してもらったり(「大賛成は両手で挙手、ちょっと賛成なら片手、少しだけなら遠慮気味の挙手」のようにやるなどの変化球もオススメ)、カードや物で選んでもらうことで意見表明になるような工夫を行うのも一つです(「※ 参加しないのはOK! ただし機会損失の可能性も……」もぜひご参考ください)。
ただ、繰り返しになりますが、話すことが『こどもかいぎ』のスポットライトではありません。その子を尊重し、無理に話させないよう気を配ってあげてください。
3. デコボコ状態
しゃべりすぎる子がいたり、話の長い子がいたり、一方で全く話せない子がいたり、と言う状態です。
これも決して悪いことではないのですが、出来るだけ多くの子どもたちが、話を聴ける・話せる状態を作りたい場合は、対処する必要がありそうです。
こちらは個別に解説していますので、次の「『こどもかいぎ』あるあるハプニング集」をご参考ください。
■『こどもかいぎ』あるあるハプニング集
『こどもかいぎ』はスムーズに行きませんっ。何のハプニングもないことを期待するようでしたら、『こどもかいぎ』はストレスとの戦いになってしまいます。
「『かいぎ』中のアクシデントは当たり前」と心得、それを対処する「ゲーム」を楽しむくらいの気持ちで行っていただけると良いかもしれません。
どうすべきか迷ったときには、『こどもかいぎ』の目的を思い出し、そこから大きくズレない対応を考えていただいたり、場合によっては子どもたちにも、「『こどもかいぎ』って、こういうことをする場所だったよね」と伝えて、「基本に戻る」ことも考えられます。
※『こどもかいぎ』の目的&『こどもかいぎ』で大切にしたい10のことはこちら
以下に『こどもかいぎ』のよくあるハプニング集を記載しますので、対処法が分からない時には参考にしてみてください。
・ファシリテーターが何かを言うたびに喋り始める子がいて、なかなか進行ができない
・一部の子どもたちが話してしまう
・悪口を言う子がいる
・流れと関係のない発言が出てしまう
・複数人で話し始めてまとまりがなくなる
・ケンカをしてしまう子がいる
・子ども同士の意見が食い違ってネガティブな空気になる
・話が噛み合わない
・子どもが伝えようとしていることが理解できない
・感情的に話す子がいる
・おもちゃで遊んでいたりして、『かいぎ』に参加しようとしない
・言おうとしていたことを忘れてしまったり、途中で何を言っていいか分からなくなる
・席から離れてウロウロしてしまう子がいる
・部屋から出て行ってしまう子がいる
・おもちゃなどで遊び始めてしまう子がいる
・子ども同士でじゃれあってしまう
・床に寝そべって『かいぎ』に参加しようとしない子がいる
・「つまらない」「もうやめたい」と言う子がいる
・全く話さない子がいる
・話に付いていけない子がいる
・言いたいのだけれど、なかなか発言をうまくまとめられない
・話が長すぎる子がいる/ しゃべりすぎる子がいる
映画の中でもありましたが、時に話がまとまらなかったり、いつまでも話し続けてしまうお子さんもいます。
話したいことがたくさんあるのは、素晴らしいことではありますが、他の参加者の子どもたちにとっては、「話が長い」「他のことをして遊ぶ時間がなくなっちゃう」など、『こどもかいぎ』自体が「楽しくない」と思われてしまう要因にもなりえます。
一方で、無理に話を切ってしまうと、その子にとっては「お話を聴いてもらえなかった」と言う不満につながりますので、非常にバランスを取るのが難しい課題。ここはファシリテーターの腕の見せ所です。
まずはじっくり、最後まで聴ききる姿勢が最重要ではあります。ただ、もしそれが難しい場合は、「なるほど。面白い考えだね。」「わかる、わかる」と共感を示した後に、
「〇〇君の考えはすごく面白いから、他の子たちにも聴いてみてもいいかな?」
「〇〇ちゃんの気持ちがすごくよくわかるから、他の子たちにお話ししてもらってもいいかな?…」
「ちょっと待って。今、BちゃんがAくんの話でうなずいてたよね。Bちゃんはどう思った?」
など、うまく会話の途中で区切って、他の子が話せるようにナビゲートしてあげるのも一つの考え方です。
ポイントは「話が切られる子に対するリスペクトを表すこと」です。
バランスよく発言してもらうのは、子どもたちが空気を読んでやることではなく、ファシリテーター側の役割。一人の子が話しすぎてしまう場合、ファシリテーションの仕方を工夫してみましょう。
ぜひ、話している子も、そうでない子も、ソフトランディングできるようなファシリテートを心がけてみてください。
・ファシリテーターが何かを言うたびに喋り始める子がいて、なかなか進行ができない
現実的に、こういうお子さんはいらっしゃいます。何か質問をしようとしたりリアクションを返そうとするときに、流れと無関係に言葉を発して、進行の妨げになってしまうような時というのはありえます。このような場合の対処法……非常に難しいです。
一つご理解いただきたいのは、喋ってしまうお子さんは、決して意地悪で妨げようとしてるのではないということ。
その場にいる楽しい空気感に興奮していたり、自分のことを見て欲しいと言う潜在的な承認欲求があったり、理由は様々だと思いますが、意図的に邪魔しようとしているわけではないことは、まず認識していただければと思います。
とは言え、進行が妨げられると、話し合いができず、結果的に参加している他のお子さんの時間を奪うことにもなってしまいますよね。一人の子を尊重するのも大事ですが、そのことによって、他の子が尊重されていない状態にもなりえますのでバランスは非常に難しいところ。対策としては以下が考えられます。
・まず、「『こどもかいぎ』はみんなで話し合う場だよ」ということを再度、その子さんにお話しする。
・「聴く耳モード」や「話したい時は手を挙げようね」などのルールを、再度そのお子さんに話をして、理解を求める。
・「もし、話し合いが難しいようだったら、外で遊んでも大丈夫だよ」と『かいぎ』の場から離れるように伝える。
正直、これも一つです。その際には決して「出て行きなさい」という強い口調で言わないようにしていただきたいですね。
・その子が何か言うたびに、それを受け止めて毎回、リアクションを戻す。
「話を聴いてくれた」「自分を受け止めてくれた」と言う感覚を得られることで落ち着くお子さんもいらっしゃいます。
・その子を受け止めながら、「〇〇君には、たくさんお話を聴いたから、今度はお友達の話を聴いてもいいかな?」などと伝えて、他のお子さんから話を聴く。
ただし、これは付け焼き刃的になりがちで、あまりその子の行動は止まらないかもしれません。
※ 『こどもかいぎ』での敗北感……
現実的に、このような状況になった場合、『かいぎ』が終わった後、どっと疲れてしまう上に、「うまく回せなかった…」と敗北感のようなものを覚えがちです。もしかしたら、「もう『かいぎ』なんてやりたくない」と思われるかもしれません。
ただ、これも一つの経験です。
平坦な道ばかりでは、ファシリテーターとしての腕は上がりません。きちんと座ってくれて、質問を投げたらきちんと答えてくれて、きちんと意見を言ってくれる……。大人にとっての理想の子どもを求めていませんか? こういう時こそ、大人の価値観だけで判断しないように、今一度、振り返る時間にしていただければ……、と願っています。
世の中には色んなお子さんがいます。ひとつひとつが、ファシリテーターとしてのスキルアップ、そして人間としての深みにつながる経験になります。ぜひ、ポジティブに捉えて、その時間をも楽しんでいただけると嬉しく思います。
・一部の子どもたちが話してしまう
話す回数に偏りが生じるようであれば、発言をしていない・発言の少ない子どもの名前を呼んで、「〇〇君はどう思う?」と話を振ってみたり、時計回りなどで一人ずつ意見を聴いてみたり、「〇〇ちゃんは何回かお話ししてもらったから、今度は他のお友達にも話を聴いてみてもいいかな?」と柔らかく理解を促したりすると、全員がまんべんなく発言できる機会が増えるかもしれません。
・悪口を言う子がいる
「馬鹿にされた」などの気持ちを持ってしまった子どもに、『こどもかいぎ』が嫌な体験として残ってしまうのは残念なことです。
改めて『こどもかいぎ』のルール:・誰かが嫌がること・傷つくことは、言わない・しないようにしようね。というのを確認したり、チクチク言葉が出てきたときに、ファシリテーターが口に手を当てるなどして驚いたリアクションを取ってみたり、心臓に手を当てて苦しそうな顔をしてみたりすると、ビジュアル的に、「やってはいけないこと」と言うのを伝えられるかもしれません。
※ チクチク言葉のアフター・フォロー
『かいぎ』中にチクチク言葉が繰り返し聞かれた場合は、それを受けた子だけでなく、発言をした子双方ともにフォローしてあげたいです。
お友達のことを馬鹿にするような言葉を出るということは、もしかしたら、自分の中に溜まったネガティブな気持ちを発散していたり、何かしら「SOS」を発している可能性もあります。 発言をした子に対しては、単に叱るのではなく、まずその子がどういう気持ちなのかを、個別に、じっくりと、共感的に聴き、何があってもまずは受け止めてあげてください。
自分のことを分かってもらえたと思うと、子どもでも気持ちが落ち着いてくるものです。そこでようやく、チクチク言葉を発したことに対して、「もし〇〇君が、そういうことを言われたら、どういう気持ちがする?」と自分に置き換える問いかけをすると、応じてもらいやすいかもしれません。ただ、人を変えるのはなかなか難しいものですから、長い目で見てあげてください。
ネガティブな発言を受けた子どもに対しては、終わった後に「〇〇君がああ言っていたけれど、どういう気持ちがした?」と聴いて、気持ちを受け止めてあげてください。
たとえもし、大きな傷になっていなかったとしても、大人が一言、気にかけた言葉を伝えるだけでも、子どもは安心して、『こどもかいぎ』の嫌な体験も、後ろ向きになりすぎずに受け止めてもらえるかもしれません。
・流れと関係のない発言が出てしまう
必ずしも、投げかけたテーマから逸れてはいけないということはありません。話し合いがどんどんと発展していくことで新しい発想が浮かんだりもするので、流すのか、戻すのか、ここもファシリテーターの腕の見せ所ではあります。
流してそのまま続ける場合、話についていけてない子が出る可能性があるので、途中で解説を加えることも検討ください。
元に戻したほうが良さそうだなと判断した場合は、「なるほど。面白いね」などの共感の言葉を伝えてから、「◯◯ちゃんが今話してくれているのは◯◯についてだよね?今は△△の話をしているんだけど、△△についてはどう思う?」と聴いてみたり、「今は△△の話をしているから、◯◯についてはまた今度聴かせてね。」とお礼を言いつつ話を戻してみると良いかもしれません。
ポイントは、共感の言葉を伝えることです。
・複数人で話し始めてまとまりがなくなる
たくさんの意見が出たり、子どもたち同士で対話が成立するのは素晴らしいことです。しかし、テーマの趣旨からそれた内容を話し続けると、他の参加者が置いてきぼりになったりするので、これまでと同様、共感の言葉を伝えた後、「今みんなからいろんな意見が出ているから、少しまとめてみようか」と、ファシリテーターが一旦整理したり、(小学生以上であれば)誰かにまとめてもらったり、もしくは、うまく発言できていない子に話を振ってみたり、別の意見を聴いてみたりすると、軌道修正が図れるかもしれません。
もちろん、そのまま聴き続けるのも選択肢の一つです。
・ケンカをしてしまう子がいる
あまり考えにくいことですが、もし身体的な喧嘩になってしまった場合は、まずは止めましょう。
口喧嘩になった場合は、互いに少し離れたところに場所を移して、どうして喧嘩になったのか、どういう気持ちだったのかなど、お互いの意見を聴いてみてはいかがでしょうか?
場合によっては、映画のように「ピーステーブル」を設けて、1対1で話し合う場を作ってあげると、子どもたちのさらなる成長につながるかもしれません。
この時に「場所を移動する」というのが一つのコツです。怒りの感情には「6秒ルール」というものがあって、大抵の場合、6秒くらい経つと、怒りの感情は静まります。場所を移動している間に落ち着いてくる場合も多く、冷静に話し合える確率が高まります。
・子ども同士の意見が食い違ってネガティブな空気になる
多様な意見が出るのは素晴らしいことですよね。しかし、自分の意見を尊重されていないように感じられてしまう場合や、尊重していないかのような反応が出てしまう場合、場の空気が悪くなるかもしれません。
ここもファシリテーターの腕の見せ所ではありますが、まず、子どもたちには、「異なる意見を聴くのが良いこと」だと言う認識が薄いかもしれませんので、ファシリテーター自らが多様な意見を面白がってみてはどうでしょう。
「今みんなからいろんな意見がでて先生はすごく嬉しいんだよね。◯◯くんは、こういっている、◎◎さんはこういっている、どっちも素晴らしいし、先生はどっちにも賛成。みんなが違う意見を言い合えるのって、新しい考え方というプレゼントをみんなにあげることだと思う。もっと違う意見や、こういうふうに考えたらみんなが納得できるという意見があったらぜひ聴かせて欲しいな」
などと伝えてみたり、「そんなことは考えていなかったなぁ」と褒めてみたり、どちらの考えにも共感を示したり、いずれの意見も貴重なものだ、と言う姿勢で臨むと、ネガティブな空気は和らぎやすいかもしれません。
・話が噛み合わない
原因はそれぞれの理解が異なっていたりするケースが多いので、ファシリテーターがそれぞれの意見を受け止めつつ、確認したり、解説したり、質問をして理解を深めようとしたりすると、噛み合わせが良くなっていく可能性が高まるかと思います。
・子どもが伝えようとしていることが理解できない
子どもは一生懸命、話してくれているけれど、話している意味が分かりにくい、ということは現実的に出てきます。その場合、「全然、分からない」と切り捨てるのではなく、「理解しようと頑張っているのだけれど、うまく分からなくてごめんね」と言う姿勢で、質問し直してみましょう。
そして、理解できたことを「こういうこと?」と都度、確認すると、子どもは「分かってくれた」と言う気持ちになる確率が高まります。
どうしても分からない場合、他の理解していそうな子に解説してもらったり、「ごめんね。私にはうまく分からないから、また後で聴かせてもらえる?」と伝えてから、『かいぎ』を進行するのも一つです。
※『こどもかいぎ』の運営: ファシリテーターの話の「聴き方」2つのポイントはこちら
・感情的に話す子がいる
場合によっては、怒りや涙を見せながら、感情が抑えられずに話をする子もいるでしょう。そのときには「怒らないで」とか「泣かないで」とは言わず、子どもから出てきた感情をそのまま受け止めます(難しい時も多いですが)。そして、その感情が意味しているところを探りながら話を聴いていくと、心の奥底に隠れた、何か宝物のようなものを探り当てることができるかもしれません。
ただ、話が続けられないようであれば、話を続けるか、ちょっと休憩するか、『かいぎ』からも抜けてお外に行くか、などの選択肢をその子に提示して、判断してもらうのも一つです。
また同時に、「感情に巻き込まれないように」と中立的で、冷静すぎる態度で応答していると、場合によっては「分かってくれていない」と子どもは感じて、発言を躊躇してしまうこともありえます。『こどもかいぎ』はカウンセリングではありませんので、あまり冷静になりすぎなくても良いかと思います。
時に、子どもの気持ちに共鳴しながら、相手の感情レベルに合わせて、話を聴くことも、率直な対話につながるかもしれません。
・おもちゃで遊んでいたりして、『かいぎ』に参加しようとしない。
その時間帯に『かいぎ』をすることは、いわば、大人の都合でもありますので、ぜひ、自分のやりたいことを途中で止められる子どもの気持ちを尊重してあげてください。
「遊んでいるところ、ごめんね。そろそろみんなで『かいぎ』を始めたいんだけど、〇〇ちゃんは参加できるかな?」と参加の可否を聴き、出たくないのであればその気持ちを尊重し、場合によっては途中から参加しても良いことも伝えても良いでしょう。おもちゃと一緒に参加したい気持ちがあれば、それも尊重し、一緒に片付けをして参加してもらったり、何らかの工夫をすることで、気持ちよく『かいぎ』に参加してもらえたらいいですね。
・言おうとしていたことを忘れてしまったり、途中で何を言っていいか分からなくなる。
ハプニングというほどではありませんが、ぜひ、その状態を笑顔で受け入れて「大丈夫だよ。また思い出したら教えてくれる?」と伝えてあげて、しばらく経ってからまた振ってみてください。
結局、思い出せないこともあったりしますが、「気にかけてくれた」と言う経験が、「自分の意見をまた言ってみよう」と言うモチベーションにつながります。
以下は「初めての『こどもかいぎ』で起こりうる3つのこと」の「1. カオス状態」をご参考ください。
・席から離れてウロウロしてしまう子がいる
・部屋から出て行ってしまう子がいる
・おもちゃなどで遊び始めてしまう子がいる
・子ども同士でじゃれあってしまう
・床に寝そべって『かいぎ』に参加しようとしない子がいる
・「つまらない」「もうやめたい」と言う子がいる
以下は「初めての『こどもかいぎ』で起こりうる3つのこと」の「2. 無風状態」をご参考ください。
・全く話さない子がいる
・話に付いていけない子がいる
・言いたいのだけれど、なかなか発言をうまくまとめられない
■『こどもかいぎ』5つの終わり方
『こどもかいぎ』を終えるときは以下のように展開すると、子どもたちの次への意欲につながると考えています。
1. 「終了予告」をしましょう
大抵の場合、子どもたちは『こどもかいぎ』を楽しんでいますから、終了をイヤがります。
そこで、いきなり終えるのではなく、終了の時間が近づいてきたら、「では、最後にこれを聴いて終わりにしようかな」「最後は◎◎ちゃんに聴いて終わりだね」などと伝えて、「終了予告」をすると、気持ちの準備が出来て良いかもしれません。
2. 感想を聴いて、花丸コメントを!
最後に子どもたち全員に振り返ってもらって、「今日は、どんなところが面白かった?」「誰の・どんなお話が面白かった?」など、感想を聴いてみてください。
その際に、一人一人の発言や聴き方、取り組み方など、「◎◎って言ってたのはすごく良かったねぇ~!」、「(積極的な発言がなかった子にも)ずっとお友達の話を聴いていて偉かったねぇ~」など、良かった点に関する「花丸コメント」を添えると、自己肯定感も高まり、「楽しかった」と思ってもらえる確率が高まるかもしれません。
また、子ども同士で「花丸コメント」をあげあうと、子どもたちの気づきも増え、受け取った子たちの嬉しい気持ちも倍になると思います。
何ごともそうですが、「終わりよければすべて良し」とも言えます。「うまく話せなかった」と思っている子にもファシリテーターからの「花丸コメント」があることによって、「小さな成功体験」となりえます。
3. まとめ
今日の話はどのような話をしたのか、簡単に振り返ってまとめてみるのも良いでしょう。
4. 終了後の受け皿
『かいぎ』の場でお話することが苦手だったり、うまく言えなかったりすることもあると思いますので、「『かいぎ』が終わった後でも、いつでもお話を聴くから言ってね」と言っておくと、子どもたちは安心すると思います。
5. 終了の儀式
最後は少し儀式的ではありますが、映画のように皆で「これで『こどもかいぎ』を終わります。ありがとうございました! また話そうね! バイバイ!」などと声を揃えると、気持ちよく終えられるようです。
もちろんシンプルに、ファシリテーターから「これで終わります」だけでも全然良いかと思います。
※『こどもかいぎ』の終わり方例
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