敬愛する北野武監督の新作は、原点回帰なスーパーバイオレンス・ヤクザ映画です。
北野作品では
『ソナチネ(93)』、『キッズ・リターン(96)』、『HANABI(98)』、『菊次郎の夏(99)』、『座頭市(03)』が僕は大好きで、
本作はおそらく「まぁ、楽しんでくれや」という感じで作られたと思うし、
見る方も軽〜く鑑賞すると思うのですが、
【映画技術的な完成度は非常に高く、
おそらく歴代のヤクザ映画でもトップ5に入る作品】
だと思います。
北野作品には珍しく(?)、
ストーリーの流れというか全体の構成のようなものがしっかりしていて、
ある種、シェークスピア作品のようなスムーズな展開を見せます(だから見ていて退屈しない)。
オールスター・キャストだった事もあってか、
登場人物が皆、際立っています。
ビートたけし、椎名桔平、三浦友和、國村隼、杉本哲太、塚本高史、中野英雄、石橋蓮司、小日向文世、北村総一朗(敬称略)
と、登場人物から人間的な葛藤が見えないにも関わらず、
これだけキャラが立っているのは、役者さんの力量と監督の演出力でしょう。
表情から動作からひじょーに細かい表現をされています。
特に印象に残るのが加瀬亮さん。
いわゆる、インテリヤクザ、という感じの登場人物で、一歩間違うと非常に薄い印象のまま終わりそうな役ですが、やっぱり力のある役者さんですね。
英語を駆使する役ですが、完璧なアメリカ映画を話していて、かなりビックリしました(英語の台詞もリアリティありました)。
構図、カメラ・ワーク、照明、映像のカラーとトーン、音楽、音響効果、大道具、小道具、衣装、特殊メイクなど技術的な部分も非常に良く出来て、単純に「すごいなぁ」と感心しました。
作品の暴力的描写が好きとかそういう事とはちょっと違って、
映画技術として素晴らしい出来だと思います。
『うまれる』的観点からみると、
・なぜ登場人物は人の命を全く何とも思わずにいられるのか、
・どうしたらそういう人間になれるのか、
という疑問はありますが、本作でそういう視点を真剣に論じるのは、
胎内記憶にツッコミを入れるのと同じく、「粋(イキ)」ではないでしょう。
北野作品はこれまで、
良くも悪くも、「未完成の美」みたいなものがこれまではあったように個人的には思っていますが(これは脚本・構成の問題だと思いますが)、
今回は「あそこをああした方が良かったのでは?」という箇所が一点もなく、
ついに監督15作品目にして、さらに突き抜けたような感じがあります。
日本ではなかなか評価されない監督さんですが、
これからますます凄い作品を作られそうで楽しみです。
ただ、完全に男の世界なので、女性にはあまりおススメいたしません(笑)。
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