敬愛する僧侶・中下大樹さんの
孤立死防止活動に同行させていただきました。
中下さんは「おひとりさま」を中心に、約30人の方々を、
月に1-2回、訪問してお話を聞いていらっしゃいます。
ご年配の方だけでなく、自殺願望の強い20-30代の方もいるようで、
そんな方々を中下さんは誰にお金をいただくわけでもなく、
「必要とされているから」
という理由で、支援されています。
本当にすごい人です。
この日、僕が同行させていただいたお2人のうち1人は、
韓流でにぎわうJR新大久保駅から徒歩5分ほどのところに住む
Tさんという80歳のおばあちゃんでした。
Tさんが住む、決して豪華とは言えない集合住宅は
5-6畳の広さで、大人が3人寝転がるくらいのスペースしかありません。
地震が来たらひとたまりもなさそうで、
都会の一等地にこんな場所があるのか、と驚かずにいられません。
玄関に近い1階の部屋では【3年前に孤立死があった】そうですが、
遺品整理にはお金がかかるということで、
誰も何もせずに、当時のままの状態が残っていました。
これが写真です。
Tさんは東北のご出身で、お話によると、
それなりの資産家の奥様だったようですが、
子どもにお金をだまし取られ、また、夫の暴力もあり、
60歳の時に東京に逃げて来たとの事。
断片的な情報で、また、少し認知症が始まってもいるようでしたので、
事実関係はよく分かりませんが、
棚に入っていた綺麗な着物を数点見せていただいたので、
それなりに裕福であった点は本当かもしれません。
東京ではしばらく、近くのラブホテルで住み込みで働いていたようですが、
いつしか年齢を理由にクビになり、
現在は生活保護で暮らしています。
財布には千数百円しか入っておらず、
終わったばかりの買物袋には、
飴と煎餅だけ。
「これだけあれば、数日暮らせる」、との事です。
家族との縁が途切れているだけでなく、
ご近所さんとのお付き合いもなく、
人とのつながりは中下さんと、
月に一度の訪問看護くらい。
普段は誰とも話をする機会がないからか、
「また余計な事言うけどもね、、、」と、よく話をしてくださり、
「しゃべりすぎちゃったね」を結ばれていました。
これまでのご経験から、人に対する猜疑心と警戒心が強い傾向がうかがえましたが、
中下さんの前ではよく柔らかい表情を見せていたのが印象に残っています。
部屋にはテレビもラジオも冷蔵庫もなく、
電化製品らしきものは携帯のみ。
やる事がなく、毎日部屋でぼーっとしてお迎えが来るのを待っているとの事で、
「死んだら骨はそのへんに捨ててください。」
と寂しく語られていました。
ありがたい事に僕の事も気に入ってくださったようで、
さすがにお断りしましたが、「娘さんに」と着物を
プレゼントしようとしてくださいました。
Tさんにも、子どもを産み、育て、
笑顔に溢れた日々があったと思うんです。
なぜ、こうなってしまったのかは、
本人が最も知りたい問いだとは思うのですが、
改めて、ほんの少しのボタンのかけ違いで人生は様々な展開を
してしまうことを思わされました。
毎日を真摯に生きるのがやっぱり一番の近道なのかもしれないなぁと、
Tさんの家を後にして思いました。
また中下さんに同行して、Tさんに会いに行きたいと思います。
★ 中下さんに取材したブログ
「【取材】死を前にして家族が急に仲良くなるわけではない」
監督・父
豪田トモ
コメントする