11月22日より公開される新作映画『うまれる ずっと、いっしょ。』では、
「グリーフ・プロセス」がテーマの一つになっています。
お腹の赤ちゃん、我が子、パートナー、親、親しい友人など、
愛する人を亡くされた方が悲しみ、苦しみを受け止め、日常生活を回復していく過程の事を「グリーフ・プロセス」と言い、
長く生きていれば、残念ながら、ほぼ誰もが経験する事です。
映画では長年、奥さまと連れ添った男性のグリーフ・プロセスが描かれていますが、
映画を作らせていただくうちに、悲しみを受け入れて新しい自分に『うまれる』ためには、
大切な「グリーフ・ケア」には、以下の3つのポイントがあるのかなと思うようになりました。
< グリーフ・ケアに必要な3つの要素: SEW(ソー) >
1. Support(精神的支え)
・・・家族・友人などからの絶対的な精神的支えを受けること。
2. Express(表出)
・・・話す、泣くなどにして身体の中にある悲しみ・苦しみを何らかの形で表に出すこと。
3. Will(意志)
・・・自分自身が何とかしたいという意志をもつこと。
◎ Support(支え)
究極の悲しみと対峙する上で、家族や友人などの「支え」を受ける事は絶対的必須条件です。
・自分は一人ではない。
・そばに誰かがいてくれる。
・悲しみに寄り添ってくれる人がいる。
・一緒に泣いてくれる人がいる。
・話を聞いてくれる人がいる。
こういった「支え」を受ける事で少しずつ癒されて行く部分が多くあります。
ただし、
これは本人が「自分は支えられている」と明確に感じられるほど、
明確に支える方が効果は大きいと思いますが、
一方で
「愛する人を亡くされた方に言ってはいけない言葉」(http://www.umareru.jp/blog/2013/07/post-1053.html)
というものもありますのでバランスに気をつけてください(詳しくはリンク先より)。
また、
この「支え」は家族や友人でなくとも、
心理カウンセラーや精神科医などプロフェッショナルな方でも良いと思いますし、
場合によっては経験豊富でスキルの高いプロに任せた方が良い場合もあるかもしれません。
◎ Express(表出)
悲しみ、苦しみという、ある種の「ストレス」を溜め込む事は
心にも身体にも大きな負担になります。
一番良いのは「泣く」という形で表出すること。
「泣」は「水に流して立つ」
「涙」は「水に流して戻す」
という意味があります。
「泣いてはいけない」、「もう泣くな」という事もあるかもしれませんが、
これはあまり助けにならないようです。
向き合って、涙を流す方が、癒しにつながります。
「話す」という事で表出するのも大切なことです。
それには話を聞いてくれる「支え」が必要です。
もしくは、自分の気持ちを文章に書いてみたり、絵に描いたりするなど
何かしらの芸術・娯楽的表現で表現するのも一つの方法かもしれません。
◎ Will(意志)
とても辛いことですが、ご本人自身が
「自分で何とかしよう」、「現状を変えたいんだ」という意志を持たない限り、
状況はなかなか変わらないのです。。。
これはグリーフ・プロセスに限りませんが、
人生の課題に対しては、やはり自分自身が何とかしたい、何とかしようと思って
行動しない限り、再び立ち上がる事は難しい面があります。
とは言え、
強い意志を持つには、「Support(支え)」と「Express(表出)」
が必要だと思いますから、この3つの要素は相互に関連し合っていると言えそうです。
この3つをつなげるとSEW(ソー)、英語では「縫い合わせる」という意味です。
グリーフ・プロセスとは、
正に、悲しみ、苦しみによって一度崩れてしまった自分を
「縫い合わせる」という事に近いような気がいたします。
映画『うまれる ずっと、いっしょ。』では、
このSEW(ソー)という3点は映像の中でよく感じていただけると思います。
悲しみ、苦しみを経験された方に、
経験されている方に、お役に立てれば幸いです。
監督・父
豪田トモ