ちょっと前の話になりますが、
最近経験した中で特に印象に残っているのが、
毎年、カナダのバンクーバーで行われている"ゲイ・パレード"です
(正確には「プライド・パレード」と言います)。
僕はバンクーバーに3年半、住んでいたものの、
映画製作に手一杯だったので、今年で37周年となる
このパレードを見た事がありませんでした。
今年の夏に家族三人でバンクーバーに行った時に、
ちょうどプライド・パレードが行われていたので参加してみたのですが、
感じ入るところが多々ありました。
カナダはいくつかの州で同性婚を認めている、
世界でも「先進的」な国。
プライド・パレードは、
「同性愛者だけでなくさまざまな国籍、人種、文化を尊重し、
市民がひとつのコミュニティーとして助け合い協力していくこと」
を目的としています。
毎年60万人以上の人がプライド・パレードに集まり、
スポンサーも世界的な企業ばかり。
つまり、
ゲイ、レズビアンなどのマイノリティが集まった、
こじんまりとしたお祭りではなく、
世界中を巻き込んで、自由と平等を訴えるイベントになっているんです。
具体的にパレードでは何をするかと言うと、
ドラッグ・クイーンやマッチョメンなどなど、
様々なコスチュームを着た人たちが、
車に乗って、歌って踊って街を練り歩く、
だけ、
なんです。
もちろんビジュアル的には色んな意味で見応えがありますが(笑)、
僕が感激したのが、そのコンセプト。
元々、このパレードは、当時、
特に差別の激しかった同性愛に対する「抵抗の手段」
として考えられたであろうと思うんです。
「社会問題に対する抵抗の方法」と言えば、
代表的なものは「デモ」。最悪の手段は「テロ」、ですね。
でも彼らはそういう攻撃的で暴力的な手法ではなく、
「歌って踊って練り歩く」
という、実に平和的で娯楽性溢れるアイデアで、「抵抗」を示したんです。
このコンセプトは、すごい!
原発にしろ、戦争にしろ、児童虐待にしろ、
社会をより良くしていくための反対の意思表示として、
「歌って踊って練り歩く」
という手法を使ったのは、
このプライド・パレードが最初なのではないでしょうか?
同性愛者に対する差別というのは、
頭で理解しているよりも激しいものがあったと思います。
リンチに遭う事もあれば、家を破壊されたり、
職を奪われたり、家族から断絶されたり、
社会から追われ、片隅でひそかに息をせざるをえなかった人々。
僕も同性愛者の方々に取材させていただいた事がありますが、
「なぜ産まれてきたんだろう?」
「どうして生き続けなければならないんだろう?」
「神様は自分に何を求めているんだろう?」
と常に向き合い続けなければならない。
そんな、どん底にいる人たちがひねり出した妙案、
それがプライド・パレードなわけです。
ダンスナンバーに揺られながら、
眩しいくらいに輝く虹色の服を堂々と見せて歩く、
自分たちが産まれて来た意味・理由を
プライドを持って見てもらう、見せつける、
その心意気
行動力
クリエイティビティ
に、実は涙が出そうになるくらい僕は感動しました。
僕に抱っこされていた娘の詩草(しぐさ)は
「面白い格好をしたお兄ちゃんとお姉ちゃん」の楽しそうな姿を
無邪気に眺めていました。
彼らの想いや意義というのは、詩草には伝わらなかったかもしれないけれど、
でも、人と違う格好をして堂々としてもいいんだ、というような事は伝わったかもしれない。
「みんな違ってみんないい」
そこまで伝わってくれてたら嬉しいな。